Book Review!


作者:小坂井 敏晶

レビュー: 増補 民族という虚構 (ちくま学芸文庫) (単行本)

東京大学出版会から出ていた『民族という虚構』の文庫、増補版である。
民族とは虚構である、というテーゼを聞いた時、人は「何だ、コスモポリタンか?」と訝しげに思うかもしれない。
しかし、本書では「虚構=悪」であるとか「虚構は事実や真実と対立する」といった考えを否定し、「虚構無しに人は生きれない」ことを強調する。
そして、議論は民族だけでなく、自我や社会といった概念にまで及び、脳科学や心理学をも駆使して、丁寧に展開されていく。
文庫化にあたり、筆者の近著との連携や、「虚構論」という論考の追加などが行われ、更に深みを増した一冊に仕上がっている。
民族論だけでなく、社会学を学ぶ人にとっても有益な論考であり、新たな共同体概念の構築の提言から、今までの常識を!
覆す。
非常に優れた民族論でもあり、社会学論でもあり、そして「虚構論」でもある。強くお勧めしたい稀有な一冊だ。


更に詳細を見る