Book Review!


作者:松井 今朝子

レビュー: 辰巳屋疑獄 (ちくま文庫) (文庫)

大岡越前守の最後の事件と紹介されています。見出しの一つに「大岡忠相の憂鬱」というところがあるように、訴えた方も訴えられた方もという感じの事件です。江戸時代のことであり、帳簿の改竄や収賄など日常茶飯事だったのではと思います。この事件は、大阪と江戸では裁決が分かれてしまいます。それも、どちらが上位の人物に話を通したかで決まってしまうという、何ともしっくりこない結果になります。

そうした中で、この話の進行役元助の純朴な一途さが溜まりません。そして、彼の人生の師とも言うべき万年先生の「欲心」を戒める言葉が響きます。口下手で生き方も上手くないこの主人公が、最後には「聖人」のように思えてきます。

この何ともやりきれないような決着を見た事件の最後の最後??!
?、思いもかけない人の働きで更に意外な最後が待っています。経緯はどうあれ、このラストの「湖畔の晩鐘」が、読む者をほっとさせ、気持ちよく読了となります。このあたりが、作者の上手さというか、サービス精神でしょうか。


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