Book Review!


作者:近藤 ようこ


レビュー: 美しの首 (ちくま文庫) (文庫)

 近藤の描く絵は、あまりグチャグチャと線を書き込まない、だから、描線が整理されている印象を与え、且つ、トーンの使用量も僅か。更に、コマ割りもシンプル(しかし、絵画的効果は十分に計算されている)故に、とても見やすく、読みやすい。そしてそれが、本書収録の3篇の中篇マンガの舞台である、日本の中世の雰囲気、男女間の心理の機微を良く醸し出していて、儚く、妖艶な作品世界を構築している。これらの理由で、本書は良質の作品であり、秀作であると評せられる。
 私は、近藤の作品を、評論家呉智英の著書『現代マンガの全体像』の勧めで、『見晴らしガ丘にて』から読んだのだが、『見晴らしガ丘~』の舞台は現代、現在を生きている人たちの、自意識の在り様を細密に描けていて、傑作だったが、?!
??書の舞台はそれとまったく異なる中世。時間的に隔たった世界を書いて、それぞれ、完成度の高いマンガ作品を創造できるという、近藤の才能には舌を巻く。
 以上の理由をもって、マンガ好きなら目を通しておいて損のない作品だと自信を持って紹介できます。


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