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レビュー: 乱歩の幻影 (ちくま文庫) (文庫)

乱歩はほぼ伝説化している。その作品世界とオーバーラップする作家なんて、乱歩以外にはいないのではないか。彼の活躍していた時代の影響もあるだろうが、彼はその世界を体現した作家であった。
ぼくは、さほど乱歩フリークではない。主な作品はみな読んでいるが、感心したのは「孤島の鬼」くらいである。だが、乱歩にまつわる数々のキーワードが醸し出す雰囲気には奇妙に惹かれる。だから、本書に収められている九人の作家の手による乱歩世界を十二分に堪能させてもらった。
中でも特筆すべきは島田荘司の「乱歩の幻影」である。以前に一度読んでいるにも関わらず、非常におもしろかった。この作品はなかなかの傑作だ。風太郎の「伊賀の散歩者」も、彼らしく虚実ないまぜのブレンドが巧みで、舌を巻い??!
?。蘭光生「乱歩を読みすぎた男」はポルノだがさすが式貴士、倒錯趣味をうまく扱って乱歩臭を最大限に引き出している。竹本健治芦辺拓服部正の三人は、それぞれ持ち味を生かしていい味を出しており、特に芦辺拓の「屋根裏の乱歩者」は、小品ながら氏のフリークぶりがうかがえて興味深い。全体的にこのアンソロジーはよくまとまっており、久しぶりにいいアンソロジーを読んだ気がした。


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