Book Review!


作者:西村 肇


レビュー: 見えてきたガンの正体 (ちくま新書) (新書)

 まず特筆すべきは、著者西村肇氏はずいぶん医者を信用しておられないらしく、そのような記述が随所に出てくる。そんな著者だからこそ、医者も知らないであろう免疫や遺伝子の話を、素人に対して巧みな例えを用いて何とか説明しようとされているのではないか。そして、著者の試みは成功していると思う。
 さすがにテーマがテーマだけに、科学的な事項の理解には頭を使わされるが、頭を使うことが科学の理解には必須であると著者が言われているのだから致し方ない。しかし、結局は著者が目的とされている、暗記ものにしか過ぎず考えることが極めて少ない日本の医学・生物学とは全く性格の異なる、「考え、組み立てる生物学」を素人に紹介することに成功していると思う。
 また、「友人」の医学界の人??!
?ちとのやりとりの中から、上記の、理論的に考え、組み立てることの少ない旧態依然たる医者たちの考えかたが浮き出してくるようで、私にはとても面白かった。
 科学とは、医者のような権威??にアグラをかいている者の独占物では全くなく、最初は素人であっても自らの頭で考える人のものであると教えてくれ、非常に痛快である。


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