Book Review!


作者:小野里 公成


レビュー: 日本の花火 (ちくま新書) (新書)

夏の定番、花火。一瞬で輝き燃え尽きる美しさと儚さが観る者を惹きつけてやまない。だがそれゆえ、雑学的な詳しいことがわからなかったのはたしかだ。

本書は入門書としてじつに気楽に楽しめる。何尺玉と語られる大物の種類、中身の仕込み方や火薬の調合の工夫など、マメ知識の解説が豊富だ。実際の花火大会の真っ最中に「あれは何尺玉のなんという種類で・・・」とウンチクを語るのはさすがにできないが、余韻に浸りながら「あれはこんな仕掛けだったのか」などとわかれば楽しそうだ。

業界の内情にも触れている。観客をより楽しませときには驚かせるために花火師がどんな工夫をしているか、といった話も垣間見え、花火の魅力をより際立たせている。
「業界用語」の説明も詳しい。たとえば??!
?ポカもの」とは何か。決して、打ち上げ失敗の“ポカ”ではない。こんな些細なことでも、わかっているとなお面白そうだ。

写真も非常に美しい。露出や絞りなどの話も欲しかったがそれがネライの本ではないから文句を言う筋ではなかろう。
明石の事件を教訓に、花火大会の出かけ方、鑑賞のコツといった実用記事もある。各地の有名大会に遠征する向きにはぜひ参考にしてほしい。

狭い紙面ゆえムリだったのだろうが、家庭で楽しむ線香花火や仕掛けものなども登場すればよかったかな、とゼイタクのひとつも言ってみたくなる、楽しい実用書である。


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