Book Review!


作者:五十嵐 太郎


レビュー: 新編 新宗教と巨大建築 (ちくま学芸文庫) (文庫)

例えば著者は、神慈秀明会MIHO MUSEUMを「単なる成金の豪華な建築ではなく、施工の精度も高い、すぐれた建築だからである」として積極的に評価している。
また、創価学会大石寺正本堂を、丹下健三東京オリンピック総合競技場と並べて、モダニズムファシズムの危うい関係を論じようとする。
建築学会は、近代の新宗教天理教金光教大本教創価学会など)に代表される同時代の宗教建築に対して、無視するか、キッチュファシズムを想起させるとして否定するか、どちらかの扱いを続けてきた。一方で伝統的な宗教建築(例えば京都・奈良の寺社仏閣)を積極的に称揚しているにもかかわらず、である。
その状況を考えれば、本作の挑戦は、重要な問題提起だといえる。
新宗教は、伝統的な宗教!
思想では救済されない、新しい世界の環境変化に対応できないと判断した人々の信仰心の発露であると考えれば、新宗教の宗教思想を体現すべく、あるいは信仰の強化を意図すべく建てられた多くの宗教建築が、同時代の民衆の精神世界の一端を表していると考えるのが妥当なアプローチであろう。
明治以降の神社建築に関わる論争や、外国の新宗教オウム真理教の建築思想にも触れており、大きなパースペクティブの中で新宗教の建築は論じるに値するものであることが立派に証明されている。


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