Book Review!
作者:徳川 夢声
レビュー: 問答有用 徳川夢声対談集 (ちくま文庫) (文庫)
徳川夢声は言わずと知れた座談の名手。
生涯にわたって行なった対談は『問答有用』という題で、1から3巻にまとめられているが、
本書はその中から阿川佐和子さんが選んだベストを収録する。
吉田茂、湯川秀樹、志賀直哉、吉川英治、柳田國男、山下清、今東光、長嶋茂雄、花森安治、
武者小路実篤、松本清張、牧野富太郎、藤田嗣治、尾崎士郎、吉田健一、岡本太郎、子母沢寛、
高浜虚子、谷崎潤一郎。
そのなかで、私のベストは山下清画伯との対談である。
山下画伯は、自分の絵は、兵隊の位で言うと、何かと聞く。しつこく聞く。
これが例の兵隊の位の話だと思うと、爆笑である。
さらに天皇陛下と自分はどちらがうまいかと聞く。
天皇陛下に差し上げるなら、大きな絵でなけ??!
?ばいけないのかと聞く。
昭和32年(1957年)に行われたこの対談は、山下画伯が35歳、夢声氏が63歳である。
さすがの夢声氏もタジタジなのが面白い。
対談を終えて夢声氏は次のように述べる。
「(すぐれた絵を物する)画伯は、あんな演技をしているだけであり、実は、それを取り囲む
私たちのほうが、イカれているのではあるまいか。という疑問がチラチラと私の脳をかすめて、
時々ヘンな気もちがした」
当時の人にありがちな偏見である。
山下画伯は山下画伯であるからこそ、山下画伯にしか描けない絵を書くのである。
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