Book Review!


作者:ウィリアム・テン


レビュー: ウィリアム・テン短編集 (1) (創元SF文庫) (文庫)

 まずは復刊めでたし。名編「地球解放」に強烈なインパクトを受けたこともあり,まとめて作品を読める機会ができたのは喜ばしい。
 1集では,「非P」が出色。核戦争後の生き残り人類が,平均・横並びであることを随一の価値となし,静かに虚しく退行をたどる様を描く異色の作品。大学の奨学金は平均的成績に最も近しい学生にのみ与えられるというくだりなど,きれいごとの平等主義を痛烈に皮肉る。平均的人間の権化たるアブニーゴー大統領の治世の様子も笑ってしまうが,能天気な某国の各場面を思い起こせば,同類だねと微笑まれているような気がせんこともない。
 「男性の反乱」は,ジェンダーフリーに正対する作品。やや画一的な部分もあるが,神経を逆撫でされる方も多かろう。
 ほかには??!
?人類の自殺指向を面白悲しく描く「もう少し速く歩いてくれないか」や,インディアンが白人を東海岸から追い落とす「針路を東へ!」もすぐれもの。史上初めての月旅行の栄誉をあきらめた男の得たものを描く「暗い星」のように,シニカルさの薄いストレートな意外な
作品も混ざっている。


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