Book Review!


作者:折原 一


レビュー: 七つの棺―密室殺人が多すぎる (創元推理文庫現代日本推理小説叢書) (文庫)

七篇の密室殺人ばかりを扱った作品集。
欧米では密室殺人小説は好まれなくなったものの、日本では、まだまだウケるという着眼のもとに、本書は書かれたらしい。
しかし本書は、本格的正当的なものではなく、密室殺人小説そのものを、少し茶化して描いている。
つまり、結末は「なぁ〜んだ」という様なもので、気負い込んで読むと、少々拍子抜けする。

しかし、唸らされる作品もいくつかある。
ディクスン・カーを読んだ男たち」は、ウィリアム・ブリテンのベストセラー作品のタイトルを捩っているが、
この密室殺人の発想は感嘆に値するもので、本当にこれが成功するのなら、完全犯罪と成り得る。

事件を捜査するのは、間抜けチックな黒星警部らであるが、警部自身が推理小説??!
?特に密室殺人小説ファンである事も傑作。
警部よりも、若い部下である竹内刑事の方が、洞察力推理力ともに上である事も、大変面白い。

物語は、社会の暗部をえぐる様な事はなく、専ら密室殺人ばかりにスポットをあてる。
あまり考え込まないで、気軽な娯楽推理小説ととらえると、大変楽しい。

エンターティナーとしての著者の魅力が、凝縮されている。


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