Book Review!


作者:松尾 由美


レビュー: バルーン・タウンの手品師 (文庫)

人口子宮が普及した近未来にあえて自然分娩を希望する女性たちのために設けられた特別区、通称「バルーンタウン」を舞台にした事件簿。まず、この作品がフェミニズム小説といわれていること、SF仕立てであることの2点で何となく引いている人へ。あなたがよほど極端な男権主義者か、ウェルズの火星人ぐらいしか思い出せないほどのSF音痴でない限り、その敬遠は全く無用です。問題提起はあくまで自然で少しも声高でなく、SF性はごくごくソフトです。何にも増してこれは謎解きのツボを心得た本格ミステリであり、その方面が好きな人にはこたえられません。そして、探偵役の美央をはじめユニークな女性キャラクターが一杯の(男性も少し)ユーモア小説でもあります。この第二集は前作よりいっそう笑いの要素が!
濃くなっていますが、それと一体のブラックな面も、また洗練された語り口も相変わらず。楽しいひとときが過ごせ、同時にいろいろ考えさせられるお得な一冊です。


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