Book Review!


作者:ロバート ゴダード


レビュー: 千尋の闇〈上〉 (創元推理文庫) (文庫)

 ゴダードを読もうとする人には、最もお薦めの1冊である。現時点でゴダードは14の作品を生みだし、そのうち13作が邦訳で読める。この「千尋の闇」はそのゴダードの1986年に出された処女作である。残念なことに、ゴダードの作品は90年代にはいると、やや質が落ちてきている、というのが一般的な評価であり、読むのなら80年代のものをお薦めするが、特にこの作品は秀作である。この本を読まずしてゴダードを語ることは出来ないし、この本を基準として、後のゴダード評ができあがっているわけである。そういう意味でも、是非とも読んでいただきたいと思う。 さて、内容であるが、歴史教師の知り合った実業家、彼の住む家と彼の出生に関する秘密。そこに登場する若き政治家の数奇な運命。読み進むうちに、この!
政治家にどんどん感情移入していき、切ない気分になってくる。この政治家と、歴史教師の人生がいれこ方式になっているのに気付くと、やや展開が読めてしまうのが、上巻の後半部分からだが、その部分のわずかな弛みをやり過ごせば、一気に最後まで読み切ってしまうだろう。


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