Book Review!


作者:椎名 篤子

レビュー: 「愛されたい」を拒絶される子どもたち―虐待ケアへの挑戦 (単行本)

子ども虐待のニュースが毎日のように入ってくる。先日の新聞によると、今年上半期に被害にあった子どもの数は死亡も含めて157人、検挙された加害者は164人で、どちらも統計を取り始めた2000年以降、最悪だそうだ。
いつも気になるのだが、新聞は「子どもが命を落とした」「重傷を負った」「保護された」ことは伝えるが、被害にあった子どもがその後どうなったのかは知らせてくれない。虐待された子どもにとっては、その後の人生のほうがずっと長く、重要なのに…。

本書は、そういった疑問に答えてくれる稀有な本だ。
過酷な虐待を受けた子どもたちに寄り添い、彼らの人間性を回復させようと苦難に満ちた努力を続ける大人たちの存在は、読む者に希望を与えてくれる。

忘れがたいシーンがある?!
??実母によって6歳まで自宅に“監禁”され、閉ざされた世界に育った舞ちゃんが「文字を発見する」ところだ。彼女は、施設の先生が読み聞かせてくれる絵本を見ながら、言葉は文字で表せることを発見する。その姿は、蛇口から出る水を手で受け止めながら、「Water!」と叫んだヘレン・ケラーの姿を思い起こさせ、非常に感動的だった。
舞ちゃんはそのとき、新しい世界への扉を確かに開けたのだと思う。

★が4つなのは、著者の「大人になった被虐待児」への思いをもっとストレートに聞きたかったから。でも、とてもいい本です。


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