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作者:空海

レビュー: 弘法大師空海全集〈第2巻〉思想篇2

秘蔵宝鑰は普通、十住心論(本全集の巻1)のダイジェスト版と言われているが、読んでみると、必ずしもそうではなさそうである。余談だが、多くの仏者は頭を剃っても欲は剃っていない、とか、誦すだけなら鸚鵡(当時は極希少であったろう)でもできるとかが書いてあって、親しみがもてる。弘法大師はユーモアのセンスもまた豊であったようだ。本巻なかで、極めつきは吽(ウン)字義である。千経万論の全仏教は大日経の三句に要約できる。この三句をさらに束ねると吽の一字となる、ということからして、王冠の中のそのまた、一番大粒のダイヤモンドである。言葉による概念の圧縮、象徴化(真言)である。視覚によるイメージ操作とは類似だが別個の回路を形成すると思われる。これは、祈りの集中力を強化して、??!
?の効率を飛躍的に高めるための、すぐれた技法でもあろう。真言を原始的、幼稚なまじないくらいに思っているあなたに薦めたい。尚、十巻章とは、菩提心論一巻、弁顕密二教論二巻、秘蔵宝鑰三巻、即身成仏義一巻、声字義一巻、吽字義一巻、般若心経秘鍵一巻、これである。このうち、菩提心論(本全集第八巻に収録)以外はすべて本巻に収められてある。梅原猛著、講談社学術文庫の「空海の思想について」も解説書として参考になる。


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