Book Review!


作者:大串 龍一


レビュー: 水生昆虫の世界―淡水と陸上をつなぐ生命 (TOKAI LIBRARY) (単行本)

 著者の大串龍一氏は、京都大学で動物生態学を専攻された方です。
今西、可児、御勢、津田、谷田、川合氏らを中心として水生生物についての研究が盛んだったいわゆる京都学派の主要なメンバーの一人です。

 「水生生物の世界(1981)」のリニューアル版とのことですが、私は旧版を読んでいないので比較はできません。
この版に限っていえば、タイトルのとおり水生生物をめぐる世界を概観でき、平易でありながら興味深く、図鑑や他の図書からは得がたい内容です。
ご自身の体験や研究成果から発せられた言葉には説得力があります。

 水生生物全体の概要説明に続き、「自然学者」今西錦司氏の「棲み分け」理論についても、概要が説明されています。
 流水、湖沼、湿地など異なった水??!
?境の解説、隔絶されているかに見える陸生生命と水生生命のつながり、最終章では人間が水とともに暮らすこと(水辺の保全)の大切さ、困難さ、展望等について述べられており、氏のライフワーク的な側面も持つ一冊です。
昆虫、とりわけ水生生物に親しんできた人たちにとっては、まさに膝を打つ思いでしょう。


更に詳細を見る