Book Review!


作者:沼上 幹


レビュー: 組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために (ちくま新書) (新書)

本書の帯には「さようなら、社内評論家!」とあるが(2003年初版)、いまや職場には評論家さえいなくなった感が強い。評論する意欲があるということは、それだけ会社に対する関心が深いことを意味する。
しかし、それぞれが孤立し、目先の仕事をこなすことや、あるいは自らの成果のみに腐心せざるを得ない状況では、下手に自分以外の領域に関心を持ったりすると、とんでもない荷物を背負い込むことになる。いやあるいは、単に変わり者と見られるのみだろうか。
本書での優れた分析の一つ「フリーライダー論」は、現状に鑑みるとそれ自体が全的に拡がっていると感じられる。2003年当時は、フリーライダーが生まれることが問題だったのだが、現在はすべての社員がフリーライダーであるため、そもそもフリーラ!
イダーという概念が意味を成さなくなってしまっているのだ。それは管理職や役員とて同じ布置にある。予想通り、会社という組織は腐ってきたのである。その原因は、明らかに成果主義にあるだろうし、雇用形態の自由化を謳う財界や経営者たちにもその責はあろう。そして、この問題は近年喧しい、偽装などの企業犯罪の温床にもなっていると思われる。
また、職場のストレス等を原因とした「うつ」うつ病の蔓延は、真面目に責任を果たそうとする者を追い詰めた結果ではないのか。
著者沼上は、こうした事態に対して、新著を問うべきだ。
本書は2003年当時には好著だったが、現在の目から見ると違う視点も必要と思われる。


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