Book Review!


作者:雑賀 恵子


レビュー: 快楽の効用 嗜好品をめぐるあれこれ (ちくま新書) (文庫)

 ミシェル・フーコーの名著『快楽の活用』(「性の歴史」II)ではないタバコ、甘いもの、デブをめぐる嗜好品についての文字通り「エッセイ」で、何かしら一方的に悪者にされている彼らへの「愛」に満ちた本である。

 筆者の雑賀さんは、大阪産業大学などの非常勤講師で、農学と社会思想が専門。『空腹について』(青土社)や『エコ・ロゴス』(人文書院)といった著書もある。

 特に面白かったのは、「甘いもの」をめぐる考察だ。相対的に分量が多い。
 戦前の雑誌「家の光」の農村部での役割や、いわゆるサトウキビによる砂糖でない甘味料の製法や、文学者らが表現した「甘さ」をめぐる考察など、うなずきながら読む。何かを断定したり、押し付けることはないソフトな文体で進む。
 身体に悪いことの多くは、心地よい。過度に淫するのはともかく、医療費高騰だ、自己管理がなってない、といった経済的、道徳的な理由で悪者扱いされると、意地でも彼らを嗜みたくなる。
 タバコの次は、お酒だろうし、いずれ甘いもの、脂っこいもの、辛いものなどもやり玉に上がる時代が来るだろう。

 そう、更には、心地よいものも身体に悪くされそうだ。生が悪くいわれないのは、心地悪い世界だからか。性は心地よいと悪者にされそうだ。草食系は時代を先取りしているのだろうか。


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