Book Review!


作者:坂本 敏夫


レビュー: 死刑と無期懲役 (ちくま新書) (新書)

 著者は死刑消極的支持者というか、”人は変われる”との信念を27年の勤務から感じ取り、近年増えた見せしめ・やっかい払い的死刑には反対の立場にある。
 故に本書の内容も死刑に賛成する読者が読めば、非常に甘く写るだろう。
 また死刑に犯罪抑止力がないとかのデータ的な内容も殆ど無い。
 終身刑導入についても、セキュリティと高齢受刑者の医療設備費等の費用が膨らむとの指摘程度で、言うなれば、世論の8割以上が賛成する死刑制度存置最大の理由としての感情論に抗う、塀の中からの感情論を主とする反論とでも言えよう。

 中心は、死刑囚・受刑者が世間の人が考えるような社会で生きられない生まれついての極悪人との偏見を覆す、様々なエピソードで、特に終盤のそれはあまりにド??!
?マティックで、私が何冊も読んできた類書では感じなかった胸を詰まらせる場面もあった。
 読者には是非読んで確かめて欲しい。

 警察にとっては、被害者や遺族の感情・改悛の情がある犯人の気持ちのようなものは、自白調書を取る為に必要なだけで、それは検察・判事にとっても求刑・量刑を決める際に、世論がどう考えるのか、またそれにどう判例も加味して摺り合わせるかを計るアイテムのひとつに過ぎない。
 そしてその世論は、マスコミ報道で怒りを増幅させられ、冷静さを失ってはいまいか?
 被害者だけへの同情に傾きがちな人にとっては、塀の中の人もまた、自分と同じ人である事を認識させられる1冊となろう。


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