Book Review!


作者:高橋 巌

レビュー: ルドルフ・シュタイナー教育講座〈1〉/教育の基礎としての一般人間学 (単行本)

この本は、人間というものをまったく新しい観点から描写しようとしている点で、「一般」というよりむしろ「特殊」と言った方がよい「人間学」を展開していると言えるだろう。ただ、それは現代において常識となっている人間観に照らして「特殊」であるということであって、間違っているとか胡散臭いとかそういう意味ではない。第一講は、人間における「表象(イメージ)」と「意志」の働きと起源!について論じるところからはじまる。

 現代の教育学や心理学では、特に意志の働きについて根本的なところから論じられることが少なくなっている。「動機づけ」の研究などは、まさに意志の働きに関連する分野なのだが、「意志」がいったいどこから、どういうふうにしてやってくるのか? という根源的な問??!
?に関しては蓋をしてしまっている。シュタイナーは、まさにそれらの根本的な意味や起源を探るところから議論を始めている。そして、そのことを把握することなくして、子どもと教育的に関わることは不可能だと言うのである。そう言われてみれば、確かにその通りだろう。子どもの創造性や意志の基盤について理解しないで、どうやって子どもを育てられるというのだろうか? いや、そもそも子どもの何を育てるというのだろうか? シュタイナーの言葉を読み進めるとき、知識や経験の注入が教育であるという前提に、私たちが多かれ少なかれ染まっていることを改めて感じざるを得ない。


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