Book Review!


作者:

レビュー: 美しい恋の物語 ちくま文学の森 1巻(全10巻) (文庫)

たとえばスタンダールバルザックが描く19世紀フランスの息吹、17世紀の「ポルトガル文」、江戸時代の「藤十郎の恋」……。古今東西、風俗習慣は違っても「恋」に身をやつす人間の姿は相変わらず。情念が理性をのみこむ恐ろしさにため息をつきつつ(「未亡人」「エミリーの薔薇」など)、だからこそ打算のない純粋さに清涼、爽快なものも感じる(「隣の嫁」「なよたけ」など)。人間の憎めないところ、いとおしいところに浸れる一冊。それにしても「藤十郎」に言い寄られる「お梶」のほてった顔やしぐさ、心の動きの、なんと生々しくなまめかしく美しいことだろう。一流の小説家は女が描けなければならないというのは、こういう表現をいうのだろう。


更に詳細を見る