Book Review!


作者:E.E. スミス


レビュー: レンズの子供たち―レンズマン・シリーズ〈4〉 (創元SF文庫) (文庫)

初めて出会って以来旧訳版がぼろぼろになってもまだ何度も読み続けている身としては、この新訳は期待以上に不安の大きいものだったが、やはりその不安は的中した。

一番気になったのは「中国のあらゆるお茶にかけて」
「for all the tea in China」をそのまま訳した?
銀河系規模の未来世界から現代に引き戻されるこの訳のおかげで、一気に興が冷めてしまった。

スラールがスレール、サムスがサムズ、エッドールがエッドアなども「無理に今風にしなくても語感優先して良かったんじゃないのか」とぼやきたくなってしまう。
(一番崩れ落ちたのは他の巻のネダニラーだったが。)
デルゴン上帝族などはまあ納得としても、このJIS表記準拠みたいな杓子定規な変更はやはりいい印象がない。

旧訳版も確かに問題は色々あったものの、どうもそことは違う部分で新しい問題が多発している印象が非常に強い。
これが次代の新訳かと言われると、とてもそうは思えない。
どうせ新訳するなら、これまでの40年とこれから先の40年を見据えた新訳にして欲しかった。
単に訳者が変わって印象も激変するだけならわざわざ新訳しなくてもな。

今後はこれが正当な日本語版になると思うと、精神探査を受けるトラスカ・ガネルの気分にならざるをえない。
旧訳版再販売してくれませんかね。


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