Book Review!


作者:サラ ウォーターズ


レビュー: 夜愁〈上〉 (創元推理文庫) (文庫)

サラ・ウォーターズは、『荊の城』で娯楽性の高い、ハラハラするミステリを描いたが、本書に同種の面白さを求めると期待を裏切られる。

1947年、44年、41年と時代をさかのぼり、登場人物たちの背負う過去が明らかにされていく、という構成は新鮮ではある。
しかし、その過去はいかにも陰惨で、人物同士の関係はじっとりと重苦しく、そんな過去は別に知りたくもないのだった。
作者の、牽引力や、文章の歯切れのよさは健在だが、読み進めるにつれ、気が滅入る。

後のほうを読むと、本の先の方(後の時代)に登場する物事のあれやこれやが、どのような過去や因果関係を持つかが分かる仕組みにもなっているが、再読する気にはなれない。


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