Book Review!


作者:ミネット・ウォルターズ


レビュー: 蛇の形 (創元推理文庫) (文庫)

私がウォルターズが好きな一番の理由は
この人が安易なシリーズ化に走らないことです。
今までの個々の作品で登場した探偵役とその助手役の人々は
すべて大変魅力的で、もし引き続いて登場させたら
ぜったいに支持を得るだろう、と思われる人たちばかりでした。
が、彼女は今まで一度もそれをしていません。
いったんシリーズ化するといつの間にか彼らの生活とか内面描写とかが
中心になって、ミステリーとしての魅力は減少していくばかり、ということになりがちなのをよく知っているのでしょう。もう一つは、この作品でも顕著でしたが、
人間のもっとも醜い感情を
大変リアリスティックに描き出すことに非常に長けている一方で
同時に人間の尊厳というか美しい面もナチュラル??!
?形で
描き出せることです。この作品の場合主人公の女性の
心根の美しさ、と精神の強さ、さらにはそれにふれて
変わっていく人々、ですね。
醜い感情があふれている世界でなおかつ
このような美しい精神を描き出せることに
敬意を表しますし、そのためいつでも読後感は
大変さわやかで、この世界に何らかの希望がもてるような気がします。プロット作りも見事です。今まで一度も(ハードカバーでも)
買って損したと思ったことはありません。今回も例外ではありませんでした。


更に詳細を見る