Book Review!
本書は、『夏光』によって注目を浴びた著者による、
ミステリー風味の短編集。
大学でアルバイトを斡旋された学生が体験する
少し不思議な体験を描く5話を収録します。
父親が入院する病院の売店でたな卸しをする女子大生を主人公にした『モドル』
海外旅行中、飼い犬に冷凍した「肉」を与えるだけの高額アルバイト
これを引き受けた学生に生じたある「疑念」と、その衝撃の結末―(『アタエル』)
日常系、心霊系、サスペンス系−とタイプは異なるものの
どの作品も、筆者ならではのミステリアスで耽美的なテイストを堪能できます。
いずれも印象深いのですが、とりわけ心に残ったのは、
学生が暮らす家を、自分の家だと言いはる奇妙な!
女性を手伝うことになる表題作『メグル』
女性の正体は何ものなのか?―という、
ミステリーとしてのおもしろさはもちろん、
物悲しくはかない心理描写と、
著者の世界観が色濃く現れた、最後の一文に心を鷲掴みにされました。
人間の優しさ、悲しみ、悪意
そして、世界の美しさを情感豊かに綴る本書。
著者やミステリーのファンはもちろん、
一人でも多くの方にオススメしたい著作です。
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