Book Review!


作者:S.J. ローザン


レビュー: 春を待つ谷間で (創元推理文庫) (文庫)

リディア&ビルシリーズの翻訳六作目です。今回の語り手はビル、前回までのシリーズ舞台であるNYを離れて彼の安息地であるアップステートニューヨークが舞台となります。
今回の作品はシリーズの二作目のピアノソナタと比較して読むとビルやリディアの小さな心情の変化が楽しめると思います。彼のピアノに対する想いは変わらないのですが、リディアとの関係、芸術に対する姿勢、知人・友人との関係、そして彼の少女に対する感情や年若い青年に自己を重ね与える慈悲。それらが一体となってシリーズを通して彼の過去と心の内が透けて見えます。ビルが語り手の時はアメリカの抱える貧富の差、正義や若さゆえの無鉄砲さが起こす事件、絆が起こす悲劇等が描かれます。それを殺伐な社会の事件というのは簡単な??!
?ですが、そこにビル、あるいは登場人物達が傷ついた心を抱えながらも揺るぎない信念と温かさをもって、未来ある若い人たちに手を差し述べようする姿が物語を悲惨な事件に終わらせずに希望をもたせるのだと思います。


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