Book Review!


作者:林 周二


レビュー: 研究者という職業 (単行本)

 長年の研究者生活を肌で感じてきた筆者が、研究者とはかくあるべきもの、という議論を「僕」「君」と、研究職を目指す若手の読者へ語りかけるように展開した著書。

 筆者はまず、研究者と教育者、そして科学者を明確に区分する。research workerという言葉が表すように、体を動かし自ら科学の最先端を切り開いていく「仕事人」こそ研究者であるという。椅子にふんぞり返ってでもできる「学者」体質が、科学するものの本質では決してありえないということを、強く主張している。同感である。

 また、研究をするという動機が(プロアマ問わず)、「未知の事項を明らかにしたい」というものでなくてはならない、ということも終始徹底して述べられている。

 これらのことは、全く当然のこと??!
?もあるが、しかし筆者は本書で、それがなされておらず、いわばぬるま湯のような研究体制と、それに適した若手研究者を生み出してしまう、日本の現在の大学・大学院教育を鋭く、しかも核心を突いて批判する。

 少々海外との比較が浅い(もしくは多少偏った)点があるとは言え、非常に重要な問題提起をしている著作である。これから本格的に研究の道を目指そうと思っている若手研究者はもちろん、いわゆる「大先生」と呼ばれている方々にも、広く読んでいただきたい一冊である。


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