Book Review!


作者:大野 克人


レビュー: 日本の金融技術は遅れていない―数学を使わずにまとめた金融技術の本質 (単行本)

 2000年3月発行である。当時も今もそうだが、日本の金融機関の内外での評判は良くない。当時の批判の一つが、日本の金融機関は金融技術で外資系に立ち遅れた、競争力を喪失した、というものだった。著者はこうした批判に反発したのであろう、題名がその気持ちを表している。
 著者の結論は、こうだ。日本の金融技術自体や、これを担う人間の質は欧米に比べ遅れているわけではない。しかし、日本での金融慣行が欧米のそれと異なるので、金融技術を十分生かせない面がある。より大きな原因は、銀行の経営者・管理者の質、金融に関わる知的インフラ(大学教育、法律家、会計士など)の質が劣っていることだ。
 考えてみると、こうした分析は、金融業だけではない。日本の多くの産業に当てはまる!も!!
のだ。その意味で、著者の分析の含意は大きい。
 なお、本書のかなりの部分は、金融技術の現状と今後進むべき方向の叙述に割かれており、上記の分析と相まって優れた「金融産業論」となっている。ある程度、金融に知識のある人に勧めたい。


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