Book Review!
作者:ジェームス トービン
レビュー: トービン 金融論 (単行本)
現実の経済は複雑である。
その複雑な経済を理解するひとつのアプローチとして、極端に単純化された代表的主体モデルを用いるものがある。
それは明確さと単純さを持つが、捨象されている重要な要素も多く、十分な分析はされ得ない。
本書は、そのような問題意識に基づき著された。
代表的主体モデルにおいて捨象される重要な要素として、とくに二点が指摘される。
一つは、貨幣の不完全な代替資産の多様性であり、いま一つは、それら資産所有者の多様性である。
それら多様性は第2章において概観され、後章において個別の分析が行われる。
第2章で提示される概念のうち、とくに可逆性、可分性の概念を用いた分析はいまだ十全に展開されておらず、可能性を秘めると考える。
原!
著のタイトルは、Money, Credit, and Capitalであり、貨幣の不完全な代替資産の多様性に着目するとの著者の姿勢を端的に表現しているだけに、金融論との邦訳は多少の無念が残る。
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