Book Review!


作者:宮嶋 博史

レビュー:レビュー対象商品: 両班(ヤンバン)―李朝社会の特権階層 (中公新書) (新書)

期待以上に良い本であった。両班李朝後期あるいは近代韓国理解の上で非常に有益なものである点は発見だった。この理由は次のようなものだ。両班は16-18世紀にかけ、地方にも徐々に浸透していき、朝鮮半島全域で地域レベルでの支配層となった(在地両班)。両班的なものの浸透は、上昇志向を持つ下層階級の両班化や、郷約と呼ばれる地方社会全体の一般人向け遵守規約にもよる。郷約は、朝鮮一の朱子学者と言われる李滉が作った郷約がモデルとなり各地域で作られた。これにより儒教的考えが朝鮮半島の隅々まで浸透し、中国以上の儒教国を作ったという。これが両班化である理由は、両班朱子学の担い手であり朱子学の権化と言えるが、郷約により朱子学儒教が地方の隅々まで浸透した状況は、朝鮮半島全体の両班!
化とも言えるからだ。

20世紀に入り日本の植民地下でも、在地両班の基盤である同族集落は温存され、社会主義思想を真っ先に入れるなど、近代でも相当な影響を持っていた。この影響力は、韓国経済の高度成長による都市化によって同族集落が解体し始める1960年代まであったと言う。

本書は、安東権氏という一族を歴史的にずっと追いつつ、一般論も添え話を進めている。構成の工夫から判り易い内容になっている。このように1つの例から一般論を語るには膨大な知識がいる。新書ながら専門家の凄さも感じた一冊だ。


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