作者:矢田山 聖子
レビュー:レビュー対象商品: 坪内逍遙の妻―大八幡楼の恋 (単行本)
坪内逍遥の妻センは、根津遊廓の娼婦だった。藝者を妻にした政治家・文学者は何人もいるが、娼婦を妻にしたのは明治では逍遥だけである。だが、逍遥がそのことについて細かに記した文書は、没後焼き捨てられてしまった。従って新資料がなければ、こういう本は意味がないのだが、案の定、従来の逍遥伝を綴りなおしただけである。ただ、大村弘毅の伝は古すぎるし、津野海太郎のものはふざけ過ぎているから、新規の逍遥伝として見ればよいのかもしれない。