Book Review!


作者:高橋 巌

レビュー: ルドルフ・シュタイナー教育講座〈1〉/教育の基礎としての一般人間学 (単行本)

この本は、人間というものをまったく新しい観点から描写しようとしている点で、「一般」というよりむしろ「特殊」と言った方がよい「人間学」を展開していると言えるだろう。ただ、それは現代において常識となっている人間観に照らして「特殊」であるということであって、間違っているとか胡散臭いとかそういう意味ではない。第一講は、人間における「表象(イメージ)」と「意志」の働きと起源!について論じるところからはじまる。

 現代の教育学や心理学では、特に意志の働きについて根本的なところから論じられることが少なくなっている。「動機づけ」の研究などは、まさに意志の働きに関連する分野なのだが、「意志」がいったいどこから、どういうふうにしてやってくるのか? という根源的な問??!
?に関しては蓋をしてしまっている。シュタイナーは、まさにそれらの根本的な意味や起源を探るところから議論を始めている。そして、そのことを把握することなくして、子どもと教育的に関わることは不可能だと言うのである。そう言われてみれば、確かにその通りだろう。子どもの創造性や意志の基盤について理解しないで、どうやって子どもを育てられるというのだろうか? いや、そもそも子どもの何を育てるというのだろうか? シュタイナーの言葉を読み進めるとき、知識や経験の注入が教育であるという前提に、私たちが多かれ少なかれ染まっていることを改めて感じざるを得ない。


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作者:斎藤 環

レビュー: 戦闘美少女の精神分析 (単行本)

数ある『おたく評論』の一つとして読むのにはいい。中でも、第四章の『ヘンリー・ダーガーの奇妙な王国』は必読個所。
おたくの起源がこんな所にもあることを知ることが出来る。
読んでいてかなり憂鬱な気分になったけれど…。普段の生活でおたくと縁のない人間にとっては、第二章の『「おたく」からの手紙』もなかなか興味深い内容。賛同できるかどうかは別として、おたくの考え方やものの見方を垣間見ることができる。また海外のアニメファンのスタンスを紹介している第三章『海外戦闘美少女事情』も、日本と海外のおたくの違いが明確に書かれていて一読の価値あり。第五章の『戦闘美少女の系譜』は日本のアニメ史の流れを大まかにつかむには最適。でも資料として数は多いが内容的には随分大雑把。
著者の好みで書かれていたり、内容紹介に疑問が残ったりする部分がなきにしもあらず。精神分析に関する専門用語が多く出てくるので、慣れるまで結構大変。最終章で著者は「おたく擁護」の立場に立っているけれど、読者に「おたく擁護」を強要しない節度は素晴らしい。
個人的には読み終えた後、なるほど、そういう見方もあるのか…
と思ったが、そこどまり。なかなか興味深く読める一冊でした。


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