Book Review!


作者:マイク・スタドラー

レビュー: 一球の心理学―勝敗を分ける微妙なアヤを読み解く (単行本)

野球を対象としながら、選手がグランド上で見せる様々な場面の一つひとつを丁寧に分析する労作。その際用いられるのが心理学や運動生理学的手法である。

これによって、例えば「どうして外野手は打球が飛んだ瞬間に落下点を予測できるのか」「どうして投手はダーツの真ん中に矢を当てるよりも高い精度で球を投げることができるのか」といった問いに答えを出している。

確かに、スポーツ選手の成功は、豊かな体格や恵まれた運動神経、あるいは不断の努力によってもたらされるかもしれない。しかし、そうした成功の裏にはどの選手にも共通する構造があるのではないか。そのような視点で描かれる本書は、野球が、単なる「投げた、打った」の活劇ではなく、最新鋭のコンピューターでさえ再現できな??!
?ような、身体の緻密な作業によって支えられているきわめて高度な営みであることを明らかにする。

本書の原題はThe Psychology of Baseballである。『一球の心理学』という邦題から「一球の駆け引きとそれにまつわる人間の心理の機微を教える本」と理解する向きもあろうが、むしろそうした一球の駆け引きよりも、一球の背後にどれだけ心理学的要素が満ち溢れているかを教えるのが、本書の最大の魅力であろう。

野球の実践にも観戦にも、一読に値する一冊である。


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