Book Review!


作者:デイヴィッド・ロッジ

レビュー: 素敵な仕事 (単行本)

 『交換教授』『小さな世界』に続く、ラミッジ大学シリーズの第3作。ロッジを全て読んだわけではないですが、おそらくスラップスティックな要素が次第に減っていって、パロディ的な面白さよりも、人間関係の機微の面白さへと、ロッジの小説が変化していく丁度過渡期にある小説だと思います。かたや理論の最前線をいく英文学講師の女性と、かたや大企業の系列会社の社長という、正反対の主人公2人は、無理無くとても丁寧に書かれていて、その関係の中で互いが変化していく過程は読んでいて気持ちがいいです。これぞまさに弁証法。そしてその結果として出て来るヴィジョンのなんと美しいこと。さりげなく構造主義批判やポスト構造主義批判が散りばめられていたり、隠喩と換喩の説明があったりするお遊びの見??!
?さはもちろんのこと、サッチャー時代のイギリスの経済状況にもそれとなく言及してあって、これまでの作品よりも視野が広がっているように思います。おそらくシリーズの中ではベストでしょう。でも、絶版みたいですね・・・。残念。復刊してくれないかな。


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