Book Review!


作者:杉浦 日向子

レビュー: YASUJI東京 (ちくま文庫) (文庫)

江戸期を扱う作家は決して少なくはありませんが、それらの作家と、杉浦日向子は、微妙に、ある意味、まるで違うような気がします。彼女はただ江戸期の空気感が好きなんだろう。ほとんど肌の感覚で、「悪くない。」と感じていて、だから、自らの周囲を江戸の空気に染め上げる。それを他人様に押し付けようなんてこれっぽっちも思ってない。思ってないにも係わらず、魅惑されてしまう者は、ものの見事に魅惑させられてしまう。ただ、この作品は非常に奇妙な作品です。杉浦日向子が、井上安治という明治初期の名も知れないような画家の絵に出逢い、まるで匂いを嗅ぐようにその絵を凝視している。この空虚感。これが、つい昨日までは265年も続いた江戸だったはずなのに、もう跡形も無くその江戸が無くなってし??!
?った・・・ 光景なのだろうか。・・・ ただ、ぽつねんと立ち尽くしてしまっているようなその感覚。


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