Book Review!


作者:石川 文康

レビュー: カントはこう考えた―人はなぜ「なぜ」と問うのか (単行本)

 純粋理性批判は難解な哲学書の中でも取分け難解と言われている。確かに、一人で登るにはカント哲学は専門用語と翻訳の壁が高すぎる。しかし、著者はその難解さを平明な一般表現でじっくり解きほぐしてくれる。それだけではない。様々な興味深いエピソードや思考実験で、私たちの世界観そのものに無数にある先入観を気付かせていく。そのプロセスは、楽しくエキサイティングでさえある。そこにある哲学は晦渋な観念の遊戯ではなく、日常生活や社会状況を支配する私たちの理性や感性に、新たな自由への可能性を示してくれるものだ。
 こうして従来の哲学入門書には見られないカントへの深いアプローチは、私たちのモノトーンなカント像を鮮明に多彩に蘇らせてくれるのである。


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