Book Review!
作者:デヴィッド エドモンズ
レビュー: ポパーとウィトゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い一〇分間の大激論の謎 (単行本)
伝記的なレベルではジャーナリストらしい入念かつ広範な調査がなされていると思う。例えばモーリッツ・シュリックの殺害に関する話。わたしはこれまで反ユダヤ主義者によるものだと考えていたが(実際そう誤認してる記述は多い)、もっと個人的な問題が原因としてあったとは知らなかった。他にもあまり知られていないような話もたくさんあり、発見には事欠かない。イギリス人的なきついユーモアセンスも(特に前半部)個人的には好み。 だが哲学的な方面では誤りや浅薄な記述が多くみられる。ゲーデルについてはやはりというか間違ってるし、ラッセルの論理学の功績にフレーゲの名前を全く出さないのはどうかと思う。またウィトゲンシュタインの後期哲学をあの程度でまとめるのはいくら何でも乱暴すぎるし??!
?説明も浅薄。ポパーについては詳しく知らないので何も言えないが、総じて「対決」という軸にまとめるために、両方の思想を戯画化した面が感じられる。
まとめれば、ポパーやウィトゲンシュタイン周辺の伝記的事実や思想的雰囲気について知りたいのならかなりお勧めできるが、哲学的な側面を求めるなら別の本を読んだ方がいいと思う。
訳者の仕事はすばらしい。訳注も親切丁寧。
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