Book Review!


作者:梨木 香歩

レビュー: ピスタチオ (単行本)

今年これまでの読書体験で、一番こころがときめきました。
何かとても大きなものと対峙するときの、緊張と覚醒を
主人公と共有し、
恋とか性とかを介在させなくても
人間同士が深いつながりを持てると再認識したからです。

話は逸れますが「つながり」という言葉は市民活動とかでイヤというほど聞き
手垢がつきすぎていると思います。
しかし本書の場合「つながり」としか言いようがありません。
言い換えるとしたら「悲しみの共時性」とでもするしかありません。

作中、HIVキャリアの男性は食事のたびに服薬を続けます。
われわれが生きる限り、不安も不快も決して無くなりはしないと告げるかのようです。
そうであるのだけれど、何か非常に深い世界が行間に立ち上??!
?ます。

貧困やナショナリズムが日々の話題になる、
どこかザラザラとして無機質な時代に
品格のある文章で書かれたこのような読み物を
手にすることができて幸福です。


更に詳細を見る