Book Review!


作者:コジマ ワーグナー


レビュー: リヒャルト・ワーグナーの妻 コジマの日記〈2〉 (単行本)

コジマの口吻が手に取るように聞こえてくる。

「晋仏戦争」という日本人には馴染みの薄い歴史的渦中にあって、その勝敗に一喜一憂するワーグナーやコジマ、トリープシェン内外の友人たちの小市民的姿・・・・。
ニーチェワーグナーやコジマの制止も効かず、愛国的義憤から義勇兵として敵地へ赴くといったありさま。

フォン・ビューローへの贖罪を底流に止めおきながらも、法的手続きを経てワーグナーとコジマは正式に結婚する。

ジークフリート」や「神々の黄昏」各幕の作曲推移をコジマは丹念にモノ語る。ある時はピアノで家人や友人に、または「指輪」のなかの台詞をワーグナーは夕げのあと
披露する。この光景は微笑ましくも容易に思い浮かべることができよう。
夫婦生??!
?のすれ違いを言葉少なにぼやきつつ、諸々の生活の煩悶や子供たちの行く末、そんな日々、コジマの誕生日にワーグナーから贈られるあの「階段の音楽」
トリープシェン牧歌(ジークフリートの牧歌)はわれわれのよく知るところである。

特筆すべきは、当時の社会情勢の一端に「ローマ教皇無謬説」という耳慣れないうねりが日記に節々に覗えることである。
ドイツ統一を踏まえた晋仏戦争と相まってヨーロッパを席巻した宗教的動揺の経緯はこの巻の脚注に見事網羅されていて、これをもってして一冊の歴史書ができる
ほどの詳細な事実経過と毎回充実した内容で編集されている。


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