Book Review!


作者:慎 武宏


レビュー: ヒディンク・コリアの真実 (単行本)

 一連の「ヒディンク本出版ラッシュ」から一拍遅れて、その掉尾を飾るかのように書店に並びました。
 在日コリアンのライターによる日本の読者向けに書かれた、スポーツノンフィクション仕立てのヒディンク本。
 「きたきたぞ!」
と期待したわけですよ。  でもその書名にわずかながらの不安がありました。
 「ヒディンク・コリアの真実」。
 この〈真実〉ってのがクセモノでありまして、このテの字句を大仰に冠した本で過去ロクなのはなかった・・・。
 で、その不安はもののミゴトに現実のものとなったけです。
 「これぞスポーツノンフィクションの悪しきステレオタイプ」みたいな内容でした。
 貧困な語彙による過剰な修飾語。
手垢にまみれた表現を駆使してのもって?!
??った言い回し。
 コンテクストと微妙にニュアンスがずれた語句の選択。
 体言止めや特定の接続詞(「実際、」ってのを接続詞と呼ぶのかどうかわかりませんが、なぜかやたらと文頭に来る)の頻繁なくり返し。
 先行のヒディンク本が次々とコケるなかで、著者とすれば絶好のチャンスだったはずなのに、あたら陳腐な表現のオンパレードでせっかくの題材をスポイルしてしまった。
 「ヒディンクってのは実戦での用兵術や選手の人心掌握術において、トゥルシエよりは優れていたんだなあ」
 このなにをいまさら的な〈確信〉が補強されたことが、本書で得られた唯一?の〈真実〉でありました。


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