Book Review!


作者:中野 好夫


レビュー: 人間うらおもて (ちくま文庫) (文庫)

 1962年に新潮社から出た単行本の復刊・文庫化。
 ちょっと変わった評伝。取り上げられているのは、銭屋五兵衛、嘉村礒多坂本竜馬夏目漱石の門人たち、ネルソン、ポー。彼らの残した書簡を分析することで、「英雄」や「天才」といった従来の評価とは違う姿を描き出そうとしている。たとえば、ネルソンなら女性関係について。銭屋五兵衛については、時代性から読み替えてみたり。そうすることで、ひとりの人間としての個性があらわれてくる。著者は、そういった人間くささを掘り返すのが大好きなのだという。
 しかし、私にはまったく楽しめなかった。俎上に上げられている人物たちの魅力というものが、全然伝わってこないのだ。原因は幾つかあるだろう。ひとつには、視点が偏りすぎていること。ひ?!
??つには、著者の自己満足が強すぎること。そのために彼らが本来持っていた「英雄」「天才」という魅力が霞んでしまうのだ。
 こういう評伝は、考え物だなと思った。


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