Book Review!


作者:八木 重吉


レビュー: 八木重吉全詩集〈2〉 (ちくま文庫) (文庫)

「平易な言葉で、子供の感覚で見た世界の美しさが心象として強く残る詩」というのが、私のこの詩集の印象である。八木重吉は真摯なクリスチャンである。1898年東京都生まれ、1927年に29歳の若さで結核のため亡くなる。二人の遺児は重吉の没後十年目、十三年目に相次いで同病で亡くなる。一人残された夫人が重吉の詩稿を守り続け、再婚の後、重吉詩集の刊行にまで尽力される。詳しくは、「琴はしずかに 八木重吉の妻として」(吉野登美子著)をご覧願いたい。ここで、重吉の詩をいくつか引用しよう。

   母の瞳
ゆふぐれ
瞳をひらけば
ふるさとの母うへもまた
とほくみひとみをひらきたまひて
かあゆきものよといひたまふここちするなり

  夕焼
あの夕焼のしたに
妻や桃?!
??たちも待ってゐるだらうと
明るんだ道をたのしく帰ってきた

ゆふぐれの陽のなかを
三人の児が
ななめの畑をのぼってゆく
みてゐれば なきたい

  冬
妻は陽二を抱いて
私は桃子の手をひっぱって外へ出た
だれも見てゐない森はづれの日だまりへきて
みんなして踊ってあそんだ

  赤
子供は
赤いものばっかり好きだ
そんなに寂しいのかしら


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