Book Review!


作者:真樹 日佐夫


レビュー: 兄貴―梶原一騎の夢の残骸 (ちくま文庫) (文庫)

魅力的な数々のエピソード。

著者ではないが、思わず、ハーパーのソーダ割り(ハイボール)を飲みながら、話の行間から2人の青春時代を、いろいろ想像したくなる、ソフトで哀愁漂う、作品に仕上がっている。

石原兄弟を目指した梶原と真樹兄弟。一方は、いわゆる成功を収める。しかし一方は、しばし絶頂を極めるがその後の転落の方にしか、若い私には記憶がない。私は若い頃に、巨人の星をテレビで見、タイガーマスクと明日のジョーに憧れ、空手バカ一代を見て、空手を習い、そして空手地獄篇を見ながら、物事を見る目に暗さを持ち、男の星座で、幼少期の梶原を知った。まさに私の青春そのもの。しかし、まぜ石原の方が人気があるのか全く理解できなかったものだ。

一般受けする「華」??!
?ないからかもしれない。私はその一般受けするものに興味を持てない変わり者かもしれない。もしくは、人生の「味わい深さ」を感じさせるもにしか興味を持てないのかもしれない。

真樹氏の文筆には、過ぎ去った自分の青春時代の記憶の断片に、色づかいと懐かしい音楽を織り交ぜるかのような、ソフトタッチな文才がある。私は、この本が好きだ。そして人間として、負の部分もあり、正の部分もある、天才ではあるが、全く完成されていない梶原という人物を好ましく思う。そんなノスタルジックな気分にさせてくれる本だ。


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