Book Review!


作者:高田 里惠子


レビュー: グロテスクな教養 (ちくま新書(539)) (新書)

若い人には辛い本かもしれない。1989年には完全に崩壊してしまったが、かつて人文主義的な教養の伝統というやつがあったのだ。その重みを知る人にとっては、じつに面白い一冊。

おそらく著者は教養に憧れ、人文的教養人への道を歩いてきたのだろう。大人になって中に入れば、教養もきれいなものではなかったこともわかる。その道の途上で教養主義は息の根を止められ、時代とのズレは決定的となった。

本書は、教養主義をグロテスクだったと断罪するが、それは著者にとって過去の自分の否定でもある。多くの評者が「コップの中」と書いているとおり、本書は構造的に矛盾を孕んでいる。

「上にのぼったから投げ捨てるべきハシゴ」とすら言い得ない教養。のぼった先は望んでいたようなところ?!
??はなかった。しかし、それは若いころの自分を魅了し、とらえて放さなかったのだ。そんな中年女性の自己憐憫がなんともいい。


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