Book Review!


作者:赤松 啓介


レビュー: 夜這いの民俗学・夜這いの性愛論 (文庫)

 この内容は決して空想物語ではなく、著者が自ら体験した夜這いの実態を書いているので、真に迫っています。しかし、語り口調がどこか牧歌的な雰囲気を持っているので、おっとりと読んでしまいました。
おそらくは著者の記憶の中で誇大に表現している部分もあるでしょうが、多分(としかいえないが)大方の実体を把握しているのではないでしょうか。
特に「柿木はありますか?」から始まる後家や主婦たちによる「筆おろし」の箇所は読んでいて引き込まれほど艶かしいものがあります。なんというか、ほのぼのとした大らかな世界が、つい数十年前まで日本の特に農村部に風習として残っていたのかと驚きをもって読みました。考えてみれば、『万葉集』においても16巻などでは、男女がそれぞれのあそこを題材!
に歌を詠んだりするなど、大胆豪放な世界が上代でも見られたことから、もしかしたら、実は日本人は昔から性にたいしては大らかで、それを現代の私たちも遺伝子の中に引き継いでいるのではないかと思いました。「夜這い」の結果妊娠した場合の掟も、村落共同体を守るということが根底にあると思います。
民俗学者が触れなかった部分を実体験に基づいて書いているところにこの本のよさがあると思います。


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