Book Review!


作者:ヨーゼフ・ブロイヤー


レビュー: ヒステリー研究 下 (ちくま学芸文庫) (文庫)

上巻のレビューアーの方(お気に召すまま氏)も書いているが、ちくま学芸文庫として新たに刊行されたブロイヤーとフロイトの『ヒステリー研究』はまさ労作。詳しい訳註は示唆に富み、近年のフロイト研究、精神分析研究の業績が充分に活かされている。特に下巻には、これまでのフロイト全集では訳されて来なかった第3章の「理論的考察」(ブロイヤー執筆)が初めて日本語に翻訳された。これは画期的なことである。これを読むと、金関氏も解説で指摘しているが本書で性を強調しているのはむしろブロイアーであることが分かる。上下巻両方のインデックスが付され、さらに訳者金関猛氏の解説(223-289頁)がついている。この解説では、ブロイアーとフロイトの関係、『ヒステリー研究』の当時の受容などについて分か?!
??ほか、彼ら二人が「カタルシス療法」を考案するさいに参照した古典文献学者ベルナイスの学説について(それがまた、ニーチェにも影響を与えたこと)など、示唆に富む。多少値段は張るが、赤ペンで線を引き引き、じっくり取り組む価値のある一冊。


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