Book Review!


作者:石原 千秋

レビュー: ケータイ小説は文学か (ちくまプリマー新書) (新書)

 「ケータイ小説は文学か」、まさにそれが知りたくて読んだが、結論を言えば、読み終わってもその疑問は残ったまま。代表的な(よく売れた)ケータイ小説のあらすじを紹介しつつ、その構図を解き明かしてくれるのは、ケータイ小説そのものを読んだことがない読者には親切。しかし、「文学としか言いようがないだろう」と言われても。そもそも売れたのは、ふだん小説など読まないような少女層がたくさん読んだからで、一般の小説の読者層とはかぶっていないように思う。そして、これが一般の小説への入口になるかというと、ならないようにも思う。書き手と読者の、あまりにも閉じた世界。……まあそれは少女漫画にしろ、レディスコミックにしろ、やおい本にしろ、皆同じ性格を持っていると思うのだけれど、そ??!
?が社会現象にまでなるのはどういうことだろう、そこを知りたかったのだが。
 
 以前から漫画ではよくあるような過激なエピソードのパッチワークの感があるケータイ小説の世界は、どちらかというと、東浩紀氏が言うような「データベース化されたリアリズム」の方に近いのではないか。とすると、ケータイ小説は著者が言うほど新しいもの(ポスト・ポスト・モダン)などではなく、オタクたちの「萌え」同様、ただの「ポスト・モダン」のあだ花のような気がするのだが。東氏あたりに一度分析してもらいたいけれど、無理でしょうね。


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