Book Review!


作者:ポーリン ケイル


レビュー: 今夜も映画で眠れない ポーリン・ケイル集 (アメリカ・コラムニスト全集) (単行本)

 ポーリン・ケイルの文章は啖呵である。エクスキューズは一切ない。独断と(時には)偏見にみちみちているその批評は、気に入らない作品・役者に対して特に冴え渡る。無声時代からの映画マニア、その知識を縦横無尽に駆使してダメを力説してみせてくれる。 知識と、その量にだけ拠っている批評なら簡単に反論もできるが、ポーリン・ケイルの批評の核は彼女独特の感性であり、それが本当に独特なので読む者は引き込まれてしまう。どっしりとした手応えがあり、確かだとおもわせる語り口がある。この語り口こそがこの人の本の一番の魅力である。文章はしばしば脱線し、そこでしばらく踊っていたかと思うとあれよという間に舞い戻りキツイ締めの一言に至る。(訳者の苦労がしのばれる。) もう10年も前の本な?!
??で取り上げられている映画も、ビデオでさえ見られなくなっているものも多いが、この人の芸(と言ってしまってもいい)は古びない。映画のレビューとしてだけでなく、読み物として完結している。でも、読みなおしてみると、あら不思議、けなされている映画ほど見なおしたくなってしまう。そしてこの人なら最近話題のあの映画をどう評価したのかと想像してしまう。(彼女は‘91年に引退している)
 


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