Book Review!


作者:有栖川 有栖


レビュー: 月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫) (文庫)

江神シリーズの第一作。
有栖川氏の作品では、いくつかの些細な手掛かりが与えられ、
その手掛かりから過去を論理的に再構成するという探偵手法が
採用されている。このデビュー作も例外ではない。
江神探偵の推理の過程、手掛かりの提示は周到に練られており、
ミステリーとして十分に楽しめる作品になっている。

惜しむらくは、論理的な推理を支える手掛かりが些細過ぎて
すこし劇的要素に欠ける点であろうか。この欠点ゆえにやや
印象が薄い作品になっている気がしないでもないが、
実現性の低い大仕掛けなトリックに辟易しているミステリー
ファンにとっては、改めて「推理」とは何かを考えさせてくれる
清涼剤的な作品になっているとも思う。


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