Book Review!


作者:鮎川 哲也


レビュー: クイーンの色紙 (光文社文庫) (文庫)

ヘボ探偵が切羽詰ってバーテンに相談するや、たちまち謎が解ける・・・という「安楽椅子探偵」ものの「三番館」シリーズ。『太鼓叩きはなぜ笑う』『サムソンの犯罪』『ブロンズの死者』『材木座の殺人』に続く5冊目。鮎川哲也といえば傑作揃いの鬼貫警部もの長編が有名だが、この短編シリーズも非常に面白い。語り手の探偵はヘボだがコツコツと歩き回りはし、彼の、自身の女性の趣味やらモットーやらを独白する語り口にニヤリとさせられる。そして、名前も年齢も住まいも不明のバーテンは仕事熱心ながら、”解けない事件”を持ち込まれるととても楽しそうに解いてくれる、読者も肩の凝らない存在である。バイオレット・フィズを注文して謎は解け、その後はギムレットで祝杯を上げるのがお決まり。この『クイー?!
??の色紙』では、表題作が、鮎川氏自身も登場するパーティでの、クイーン(ダネイ)の色紙紛失事件で、推理小説に関するウンチクがいっぱいの、事件はシンプルだがかなり楽しめる作品である。その他、どれもレベルの高い短編。


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