Book Review!


作者:S・S・ヴァン・ダイン


レビュー: 僧正殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集) (創元推理文庫) (文庫)

ヴァン・ダインのミステリーは面白い。

この作品も冒頭から、前作の’グリーン家’を引用しながら、「最も陰惨にして最も奇怪、最も納得しがたく、最も戦慄を呼ぶ事件」との口上で煽る煽る。
奇奇怪怪の連続童謡殺人に名探偵の名調子(薀蓄話)を交えて物語が進み、特に全編を支配する、僧正(ビショップ)の不気味な影と、重厚な雰囲気が印象的です。
また事件の展開も飽きさせず、冗漫と評される会話の部分もテンポ良く進められています。

特に議論になるのは、犯人とその不条理な動機ですが、ありきたりな犯人や動機で、こんな大事件の収まりがつくはずもなく、ヴァンスも終盤では動機の説明に多くの言を費やしているので、私としては’あり’との判定を下してます。

ヴァン・??!
?インは、一般的に「探偵小説のための20則」のような古臭いミステリーのルールを作った保守的な作家という見方をされますが、実際は読者を楽しませる為に、自ら作成したルール破っても作品を書くような作家で、本作はそのエンターテナーぶりが最高潮に達した作品だと思います。


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